鉛の有害性と有用性

最新更新日 2025-07-04

RoHS指令やELV指令において、電気電子製品や自動車での鉛の使用は厳しい制限がかけられています。
その理由は、過去においてライフサイクルを終えた電気電子製品や自動車が野放図に廃棄されて、含有していた鉛が環境中に流出して自然環境や人体に深刻な影響を与えたからです。

鉛の有害性としては、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性などが指摘されています。
いずれも鉛が体内に蓄積されて数十年後に健康被害が発生、さらには子や孫へ世代を超えて発症する長期毒性です。

鉛は、昔から広く使われてきた柔らかくて加工しやすい金属です。
電気を通しやすく、はんだや電池、ペンキ、水道管など、いろいろなものに使われてきており、その有用性は広く認識されています。
そのため、RoHS指令などでは暫定的な使用許可として適用除外用途が部分的に認められています。
工業材料としてのアルミ合金や鉄鋼材料には加工性を高める要素として鉛が現在でも限定的に使われています。
しかし、その範囲は年々限定されてきています。

かつて車のガソリンには有鉛ガソリンが使われていました。
水道水を送るパイプに鉛が使われていたこともありました。
肌を色白に見せるための化粧品として「白粉(おしろい)」がかつては使われていましたが、白粉には鉛が含まれており、健康被害が発生していました。

有用性と引き換えに多くの健康被害を引き起こす可能性があるため、現在では鉛は使用禁止になっているケースがほとんどです。
今後、鉛の使用については完全な禁止に近づいていくことが考えられます。

(長谷川 祐)