米国の紛争鉱物規制が欧州にも拡大してきました。
EU版紛争鉱物規制として、「紛争地域および高リスク地域からのスズ、タンタル、タングステンおよび金の輸入者に対するサプライチェーン・デューディリジェンス義務を課す欧州議会および理事会規則」(REGULATION(EU)2017/821)が今から一年後の2021年1月に事実上の運用が開始されます。
EU版紛争鉱物規制も、米国版紛争鉱物規制と同じく、コンゴ民主共和国と周辺地域で産出されるスズ・タンタル・タングステン・金(通称、3TG)が規制対象です。ただし、これらの鉱石をEUに持ち込む輸入者が対象事業者となっています。 工業材料としての3TGの鉱石が対象であり、3TGを含有する電機製品や自動車など最終製品を対象にしている米国とは異なります。
今のところ、EU版では電機製品や自動車など最終製品は対象になっていないため、日本の製造業への直接的な影響は少ないと思われます。しかし、今後、米国紛争鉱物規制のように最終製品への3TG含有が対象化される可能性もあります。さらにコバルトなどの3TG以外の金属についても拡大が検討される可能性があります。
紛争鉱物は有害物質への規制ではなく、産出地や調達ルートに関する規制です。対象の紛争地域が軍事的な紛争地域から人権や貧困の問題地域に拡大する兆しもあり、今後の動向には注意が必要です。
(長谷川 祐)