IMDS(International Material Data System)の略称で、自動車業界専用の「材料データの登録・報告システム」のことです。

「どの部品に、どんな化学物質が、何グラム使われているか」という情報を、インターネット上で管理・伝達するために作られた世界共通の仕組みです。


1. そもそもIMDSとは?

IMDSは、世界の自動車メーカーが共同で開発しているシステムです。
簡単に言うと、「自動車業界版の巨大な成分データベース」です。
運営管理は、世界中の主要メーカーが参加する「IMDS運営委員会(Steering Committee)」によって行われています。

世界中の自動車メーカーや部品メーカーがこのシステムを利用しており、インターネット上のブラウザを通じてデータの入力や送受信を行います。

なぜ必要なのですか?

主に「環境規制(リサイクルや有害物質の管理)」を守るためです。

自動車は、廃棄される際に正しくリサイクルしたり、鉛や水銀などの有害物質が含まれていないかを確認したりする必要があります。これを一台一台完成車になってから調べるのは不可能です。

そのため、「ネジ1本、塗料1滴まで遡って、何でできているかをデータで集めよう」という目的で運用されています。


2. どのような仕組みで動いているのですか?

Webブラウザでアクセスする「クラウドシステム」です。

IMDSは、特定のソフトをインストールしたりダウンロードするのではなく、EdgeやChromeなどのWebブラウザを使ってアクセスします。
メールでファイルを送り合うのではなく、Web上のデータベースの中でデータを作成し、それを特定の顧客へ「送信(開示)」することで情報を伝達します。
下位サプライヤーへの調査依頼もすべてこのシステム内で行えるため、メールを使わずにWeb上だけで業務が完結するのが特徴です。

顧客からの依頼を受け付けたり、サプライヤーへ依頼するときも、全てこのシステム内で行います。

データの流れ

  1. 材料メーカー(塗料や樹脂を作る会社)が、材料の成分データを登録する。
  2. 部品メーカー(ネジやスイッチを作る会社)が、その材料データを使って部品データを作る。
  3. アッセンブリーメーカー(エンジンやシートを作る会社)が、それらを組み合わせてユニットのデータを作る。
  4. 最終的に自動車メーカー(完成車メーカー)がデータを見ることができる。

このように、仕入先からデータをもらい、自分の製品情報を足して、次の顧客へ情報を開示していく作業を、サプライチェーン全体で行います。


3. chemSHERPA(ケムシェルパ)との違いは?

「製品に含まれる化学物質を伝える」という目的は同じですが、以下の点が異なります。

特徴IMDS(アイエムディーエス)chemSHERPA(ケムシェルパ)
主な業界自動車業界電機・電子・一般産業機器
形式Webシステム
(ブラウザで操作)
専用ツール
(ファイル交換式)※
言語基本は英語日本語・英語・中国語
厳しさ非常に厳しい
(入力ミスは拒否される)
比較的柔軟

※chemSHERPAは今後、CMPというWebシステムへの移行が予定されていますが、現時点ではファイル運用が主流です。CMPは、IMDSのような使用感であろうと考えられます。


4. 担当者がやるべきことは?

取引先から「IMDSでデータを提出してください」と言われた場合、以下の手順が必要です。

  1. ユーザー登録: 公式サイトで会社登録を行い、IDを取得する。
  2. データの入手: 自社製品に使っている部材メーカーから、IMDSデータを受け取る(または成分表をもらい、自社でIMDSに入力する)。
  3. データ作成・送信: IMDS上でデータを入力し、取引先のID宛に送信(Send)する。

難しいと感じたら

IMDSは入力ルールが細かく、英語での操作が必要なため、慣れていないと「エラーが出て先に進めない」「取引先に拒否された(Reject)」というトラブルが起きがちです。

エコハーツでは、忙しい担当者様に代わって「ユーザー登録」から「データの作成・代理送信」までサポートしています。

「マニュアルを読む時間がない」「1件だけなのですぐ終わらせたい」という場合は、お気軽にご相談ください。