まずは「なぜ出せないのか(拒否の理由)」を特定しましょう。
理由によって、有効な「切り返しトーク」や「対策」が異なります。

大きく分けて、拒否理由は以下の3パターンに分類されます。

  1. 「やり方が分からない・面倒くさい」(スキル・リソース不足)
  2. 「企業秘密だから教えられない」(機密保持)
  3. 「出す義務がない・契約に入っていない」(法的理由・強気)

それぞれのケースに応じた、具体的な対策を見ていきましょう。


対策1:「やり方が分からない」と言われた場合

【対策】相手の作業負担をゼロに近づける「極低ハードル提案」を行う

中小規模のサプライヤー様で最も多いのがこの理由です。
「専任担当者がいない」「分厚いマニュアルを読む時間がない」「英語のツール(IMDS等)は触りたくない」という心理が働いています。

この場合、「マニュアルを読んでやってください」と正論を伝えるのは逆効果です。
以下の2つの「代行案」を提示して、相手の心理的ハードルを下げましょう。

提案A:【自作の簡易マニュアル】「ここに入力するだけ」等の画像を送る

公式マニュアルは情報量が多すぎて、忙しい担当者は読む気になれません。
「御社の部品の場合、入力が必要なのはこの3箇所だけです」等と、実際の入力画面のスクリーンショットに赤枠をつけた画像等を作って、メールで送ってあげましょう。
「これを見ながらなら、すぐに終わりますよ」と伝えれば、協力してくれる確率は跳ね上がります。

提案B:【Excel代行入力】「成分名と重さ」だけ教えてもらう

ツール(chemSHERPAやIMDS)の操作を強要するのを諦めるパターンです。
「ツール入力はこちらでやりますので、このExcel表に『材料名』と『重さ(g)』だけ書いてメールでください」等と伝えます。
SDS(安全データシート)や成分表さえもらえれば、データ変換は可能です。
「面倒なツールを触らなくていい」というだけで、多くのサプライヤーは安心して情報を出してくれます。


対策2:「企業秘密だから教えられない」と言われた場合

【対策】ツールの「機密保持機能」を説明し、安心させる

正確な配合比率(レシピ)を明かすことで、技術が流出することを懸念されています。
この場合は、各ツールに備わっている「企業秘密を守る機能」を説明しましょう。

  • chemSHERPAの場合: 企業秘密の物質については、物質名やCAS番号を伏せての記載が可能であることを伝えます。
  • IMDSの場合: 「Confidential(機密扱い)」機能を使えば、サプライチェーン上には情報が開示されず、特定の自動車メーカー等の信頼できる相手にだけ届く仕組みがあることを説明します。

「レシピそのものを全公開する必要はない」と理解してもらうことが重要です。


対策3:「出す義務がない」と強気に断られた場合

【対策】「サプライチェーン全体の責任」としてリスク共有を説く

「うちは部品屋であって化学屋じゃない」「そんな手間賃はもらっていない」等の反発があるケースです。
ここでは、法規制(RoHS指令やREACH規則)の順守は、サプライチェーン全体の責任であるという原則を伝えて交渉します。

「もし御社の部品に禁止物質が入っていて、最終製品が海外でリコールになった場合、御社にも製造物責任が及ぶ可能性があります」等と、データ提出が「御社自身を守るためでもある」というリスク管理の観点から説得を試みます。


ワンポイントアドバイス:どうしてもデータが出ない時は?

あらゆる手を尽くしても情報提供を拒否された場合は、最終手段として「不使用証明書(保証書)」だけでも紙(もしくはPDF)で入手しましょう。

「禁止物質は入っていません」というハンコ(署名)だけなら押してくれるケースは多いです。
データとしての活用はできませんが、万が一トラブルが起きた際に「確認はとっていた」という最低限の証拠(エビデンス)にはなります。


まとめ

仕入先様への依頼は、まさに「交渉」です。
相手が何に困っているのかを見極め、「それならできる」と言わせる提案を用意しましょう。

もし、「交渉している時間がない」「自作の簡易マニュアルの作り方が分からない」「頂いたExcelデータからの変換作業が大変だ」という場合は、エコハーツが「サプライヤー対応」から「データ代理作成」までサポートいたします。 まずはお気軽にご相談ください。